『マネログ』 ポジティブな書評

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女学生達の緊張感が伝わるハイテンポな文章『乙女の密告』

こんにちは、まねですー

今回は、赤染晶子さんの芥川賞受賞作『乙女の密告』を紹介。

 

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外国語勉強に励む学生達

京都の外国語大学で、女学生達はスピーチコンテストの課題に追われている。

彼女達は授業中に、他の授業の予習をする。雑談や化粧、携帯をいじったりする

余裕はない。語学の授業は予習が命である。

彼女達は常に辞書を引き、見知らぬ言葉の意味を探している。

 

課題は『アンネの日記』のドイツ語テキストの暗唱。

スピーチのゼミを担当しているバッハマン教授は女学生達を「乙女」と呼ぶ。

バッハマン教授はアンネフランクに対して格別の思いを持ち、

アンネをロマンチックに語ることを決して許さない。

乙女達はバッハマン教授の過度なスピーチの要求に、各々向き合ってゆく。

 

そんな中、バッハマン教授と、ある乙女との良からぬ噂が乙女達の間で噂され始める…。

 

スピーディで精密な短文

作中の文章は非常に簡潔に、装飾なく、書かれている。

非常にテンポの速い文章。

それが心地いい。もともと文章が非常に簡単で読みやすいから、

結果として読むスピードが速くなっていく。

この文体の表現が、作品の内容の緊張感にとてもフィットしている。

 

スピーチコンテストの予習のためには、一分一秒も無駄にしたくない気持ち、

スピーチの内容を本番で忘れた時の焦り、ストップウォッチの刻む精密な数字、

アンネフランクの、ユダヤ人の心理状況に、立場の全く違う女子大生の自分を重ねて思考する姿勢、

そして、良からぬ噂が目には見えない動きで伝染してゆく不安。

 

物語の中に漂う焦燥感を、短文でスピード感ある文章が、

見事に表現している作品です。

学生達の感情の起伏の激しさと変化の速さを、そのまま文章にしたような。

 

読書の参考になれば幸いです(´∀`)