『マネログ』 ポジティブな書評

本が読みたくなるブログを目指して

『君たちはどう生きるか』損得ではない読書がしたい人へ。

 

君たちはどう生きるか』 原作:吉野源三郎 漫画:羽賀翔一

 

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現時点で累計120万部突破。

池上彰さんが心から感動し、人生を決めた一冊」(帯より)

八十年前の「君たちはどう生きるか 吉野源三郎著」の漫画版。

 

 去年の中頃から本屋に平置きされてたので、表紙を見たことある方は多いかと

思います。

最近ではコンビニでも。僕もセブンでごはんと一緒に買いますた。

 

 

読みやすい!とっつきやすい!

羽賀さんの絵が昭和初期の時代背景と、とてもマッチしています。

 

主人公のコペル君(コペルニクスから)が経験する挫折や葛藤、

発見の喜びを、元編集者のおじさんが見守りながら助言していくという流れ。

 

 

 

読む人によっては

コペル君の経験するエピソードは

手垢のついた内容に感じるかもしれない。

 

現代の人にとって

いじめ、貧乏、友達との疎遠関係なんかを題材にした作品(特に漫画)は

そんなに新鮮味は感じないと思う。

 

むしろ、

食傷気味ですらある。

今の時代、いじめ単発のようなネタは飽和状態だよね。

掛け合わせて新しさを出してる作品が主流だからね。

 

それでも、この作品に心を動かされる理由は、

ひとつの感情に対応する丁寧さじゃないかなと。

 

この作品は

ひとつの感情の変化にとことん向き合って、

「なんでそんなこと思ったのか」

「そう思うことは立派なことなのか」

「では立派とはなにか」

「自分はどうしたいのか」

「そうする資格が自分にあるのか」

「そうするために自分は何をするべきか」

「相手のために、何を考えるべきか」

 

と、丁寧に丁寧に、コペル君と読者に考えさせるように、助言してくれる。

この丁寧さは、コペル君(中学生)と同い年ほどの学生にもわかるようにという

配慮もあるだろうけど、これが大人になって読むとかなりグサグサ刺さる。

 

根がアホな僕は感心させられっぱなしだった。

 

 

 

 

レビューにはアナクロニズム(時代錯誤)だというような意見、

あとは多様性の時代には当てはまらないという意見も多々あって、

 

それは、確かにと思いました。

80年前の作品だもんね。労働の形態も変わらない方がおかしいよね。

 

僕が思うのは、

それでも80年前の作品を、

昭和の雰囲気を残したまま出した理由があるってことだなって。

「現代には当てはまらないのでは?」ってのは、誰でも気づく大前提ですものね。

それこそ編集者のお話だし。

権限のことはよくわからないけれど、

イラスト、時代背景、文体なんかを現代風にすることも

やろうとすればできそう。でもそれはしなかった。

 

この時代背景でなきゃ伝わらない、

子供達の感情の変化とか、

それに対して素直に向き合っていく姿勢なんかが、

読者の心を打つ。

それが『君たちはどう生きるか』のキモのように僕は思います。

 

 

 

心が動き、自分の中にこみ上げてくる感情を味わう、

「感覚としての読書」を求めるならば

オススメします!

 

所要読書時間45分!!※個人差あり